2021-05-31

まずは「労務環境チェック」

中小企業に必要なリスク対策5選

 

中小企業やクリニックの経営では、財務的なリスク以外にも様々なリスク対策が必要です。

  1. 売上や資金繰りなどに関する財務面の対策
  2. 非接触・感染リスク低減のための、新商品や販売方法に関する対策
  3. サプライチェーンやサイバーセキュリティなどのオペレーション対策
  4. 場合によっては、業態転換や抜本的な経営戦略への対応
  5. 会社組織文化やリモートワーク長期化による職場環境に関するリスク対策

 

中小企業の経営者様やクリニックの院長先生には、考えることもやるべきことも本当に沢山ありますよね。ポストコロナで、ますます考えるべきことが増えてしまった、という経営者様は多いのではないでしょうか。

 

会社のリスク対策と言っても、”今すぐ”やるべきことと、”将来”に向けて構築すること、があります。また、”細かい視点”で対応すべきことと”大きな俯瞰的視野”で対応すべきこと、もあります。目が回りそうになりますね。中小企業やクリニックの経営者様であれば、限られた人材で運営していることが多く、当事務所でも、会社のリスク対策まで手が回らない経営者様向けにサポートを行っています。

 

さて、上記の、中小企業としての対策5点のうち、今回は、「職場環境に係るリスク」について考え、「どんな対策ができるのか」見ていきましょう。

 

 

職場環境・労働環境とは

 

「働きやすい労働環境」とはどんな職場でしょうか?

 

  • 従業員スタッフの安全や心身の健康が守られている
  • 従業員スタッフのモチベーションが高く、主体的
  • リモートワークが常態化した時も含めて、労務管理がしっかりできている
  • リモートであっても、各スタッフのコミュニケーションが保たれ話しやすい環境
  • 組織文化として、各スタッフの意思決定・判断がスムーズにできる

 

このような職場であれば働きやすそうですね。中小企業では特に人材がカギで、少数精鋭でやっていく必要がありますから、経営者のみな様は意識されていることだと思います。

 

 

良い職場・労働環境の鍵とは

 

実は、もうひとつ、これらの「働きやすさ」の土台となっている重要なことがあります。それが労務コンプライアンスです。

このような構図であり、土台である労務コンプライアンスが欠けると「働きやすさ」に対していくら経営者が頑張っても意味がありません。なぜなら、スタッフのモチベーションや心理面で、労務コンプライアンスが大きく影響してくるからです。労務コンプライアンスにはどんなものがあるか、次に見ていきましょう。

 

 

労務に関するコンプライアンス

 

「労務は分かるけど、コンプライアンスって何でしょうか」?日本語にすると「法令順遵守」となります。

 

コンプライアンス(法令遵守)と聞いて、「難しい・お堅い」と感じた経営者の方も、ご心配なく!
中小企業の経営者のみな様にとっては、普段の業務と並行して細かい法律まで勉強できない、という方も少なくありません。当事務所でも顧問先の経営者様へ、少しずつ、時には繰り返し、丁寧にお伝えすることを心がけています。

 

中小企業の経営に関わってくる法律は、

  • 労働基準法
  • 労働者災害補償保険法
  • 雇用保険法
  • 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
  • 労働契約法
  • 最低賃金法
  • 労働安全衛生法
  • 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)
  • 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)
  • 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)
  • 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
  • 障害者の雇用の促進等に関する法律

などがあります。

 

よく話題に上る項目を少しあげてみます。

  • 法定労働時間
  • 法定休日
  • 36協定
  • 同一労働同一賃金
  • フレックスタイム制・変形労働時間制

 

こういった法律に基づいた上で、従業員・スタッフの採用・雇用していくことが、働きやすい労働環境をつくる基礎となります。

 

これらの内容を、経営者や管理職になりたての方であれば知らない方も多いですし恥ずかしいことではありません。概要は知っている方でも、毎日これらの事を考えて企業経営する・部下と接することは難しいことです。

 

ただ、ひとつだけ大事なことをお伝えします。

「知らなかった」では済まされない、ということです。

 

 

 

中小企業でも、小さなクリニックでも、起業したてのベンチャーでも、経営者様は、スタッフの使用者であり、管理監督する責任を持っています。労務管理をしなくてはならない、という意識だけは持っていただきたいと思います。

 

では、経営者として、労務コンプライアンスの管理(労務管理)とは何すればいいのでしょうか?
次は労務管理とはどんなもので、何をすべきか見ていきましょう。

 

 

労務管理とは

 

一般社団法人日本人材育成協会によれば、労務管理とは

  • 労働者の募集・採用に始まり
  • 従業員やスタッフの配置
  • 異動
  • 教育訓練、研修制度
  • 人事考課
  • 昇進、昇給、賃金
  • 労働時間の管理
  • 退職

これらの一連の流れを適正に管理する事です。

 

これらがしっかりしていて、初めて、従業員は、安心して働け、モチベーションを高めることができます。

それによって企業の目標を達成することができる、という流れですね。

 

 

労働環境・職場環境をチェックしましょう

 

中小企業経営者様・ベンチャー・クリニックのみな様で、このような不安をお抱えの方は、労働環境のチェックをおススメします。

 

  • 従業員へ、モチベーションを高めるための声掛けはしているが、そもそも基礎となる雇用契約について法令遵守できているか見て欲しい
  • 正社員と契約社員とパート・アルバイトがいるが、労働条件や規定、帳簿書類がしっかり整備されているのか見て欲しい
  • 従業員のシフトやルールが古くないか、最新の法令と照らし合わせてみて欲しい
  • 自己流で社内ルールをつくってきたが、法令にのとった規定かどうか不安
  • 従業員・スタッフを解雇したいが、後から問題にならないか?
  • パートスタッフを雇用したいが、契約の仕方が分からない
  • 労働基準監督署や年金事務所からの調査が入った時に今後不安がある

 

労働や社会保険のエキスパートであるのが 「社会保険労務士」です。
労働社会保険諸法令と労務管理の専門家である社会保険労務士だからこそ、チェックと改善のご提案が可能です。社内の規定や雇用契約書類、帳簿や書類に不備がないかどうか、法令にあった労働条件が確保されているか、「経営の底力」ともいえる基礎の部分を確認しましょう。

 

 

 

その内容としては、下記のような労働環境にまつわる項目をチェックします。

  • 労働・社会保険の手続
  • 就業規則
  • 雇用契約
  • 労働時間(時間管理の方法、36協定、長時間残業の有無)
  • 年次有給休暇(年次有給休暇制度とその運用)
  • 給与(最低賃金、割増賃金、深夜残業)
  • 労使協定
  • 安全衛生関係
  • 健康診断の実施
  • 帳簿の整備と保存(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、労働条件通知書・雇用契約書)
  • 従業員の配置(有資格者の配置、正規、臨時、常勤・非常勤)
  • 研修体制
  • ストレスチェック
  • ハラスメント対策など

 

 

このような労使トラブル防止につながることがあります

 

ケース1

労働環境チェックを行い、従業員の病気や怪我による休職制度に関して規定できていないことが分かったので、就業規則にて規定することにした。その後、従業員が病気で休職したが、規定ができていたため、休職期間を適用し、期間満了後退職となったが、規定があったため、納得した上で円満に退職いただくことができた。

 

ケース2

忙しかった月について、シフトスタッフの休日が法的に不十分であったことが発覚した。シフト作成方法を変更し、シフト作成時に法令にのっとった計算ができるよう組み込みを行った。特に本人からクレームがあったわけではなかったが、将来的にシフトスタッフが増えていったときにはいつかはトラブルになっていたであろう。

 

うっかり!でも、知らなかったでは済まないケース

経営者
経営者
NG:
つい、シフトスタッフに休憩45分で8時間30分、シフトに入ってもらっていました。
労働基準法では、労働時間が「6時間超の場合:45分以上」「8時間超の場合には1時間以上」の休憩時間を与えなければなりません。これは、最低でも、なのでこれ以上の休憩が必要となります。
社労士クレイン
社労士クレイン
今回のケースのように8時間30分労働なのに、休憩45分、というのは違法になります。従業員の中には、法令を知らないがために、特に何も言わない人も多いですが、こういったことは経営者としては押さえておく必要があります。なお、「休憩中、ちょっと電話だけはとってもらえない?」も原則NGです。

 

経営者
経営者
NG:
知らずに、36協定なしで残業をさせていました。
残業は、「残業しておいてね」で成り立つものではありません。36協定という労使協定が必要となります。経営者と労働者が、この協定を書面で結ばないと、残業することはできません。因みに、「36(サブロク)協定」と読みます。労働基準法36条に基づく労使協定なので、サブロクなのです。
社労士クレイン
社労士クレイン

経営者
経営者
NG:
今月は忙しいので、スタッフのシフトを作成する際に、4週間に3日しか休日を入れられませんでした。
スタッフの方が気にするかどうか以前に、法的には4週間で4日の休日が必要です。忙しい時期だから、という言い訳は使えませんのでご注意ください。なお、休日は従業員のモチベーションアップにもつながりますし、体力の回復に休みは必須です。また毎月の休日の設定も大事ですが、年間を通して長期休暇を設定するなど、適切な休暇を検討しましょう。
社労士クレイン
社労士クレイン


 

ポストコロナの労働環境

 

ここまで、労働環境・労務管理・コンプライアンスの重要性やその内容をお伝えしてきましたが、最後に、ポストコロナで変わってきている「働きやすい職場」の定義について考えてみたいと思います。

 

労務管理・コンプライアンスは法令によるところなので、各社一緒ですが、働きやすい労働環境と言うと、1社1社それぞれの作り方がありますよね。

 

今回はテレワーク(在宅ワーク)と残業時間とのかかわりを一緒に考えてみたいと思います。このような調査があります。日本労働組合総連合会(略称:連合、所在地:東京都千代田区、会長:神津 里季生)が行ったテレワークで働く人の意識や実態を把握するための調査です。

 

 

「テレワークに関する調査」

期間:2020年6月5日~6月9日の5日間

手法:インターネットリサーチにより実施

対象:
今年4月以降にテレワークを行った全国の18歳~65歳の男女(会社員・公務員・団体職員・パート・アルバイト)1,000名の有効サンプルを集計。回答者の地域別割合は、北海道・東北(6.1%)、関東(56.0%)、北陸・甲信越(3.0%)、東海(8.9%)、近畿(17.7%)、中国・四国(3.7%)、九州・沖縄(4.6%)

調査協力機関:ネットエイジア株式会社

引用元:日本労働組合総連合会(連合).「テレワークに関する調査2020 pdf≫

 

この調査によると、従業員が99名以下の中小企業では、4社に1社が時間管理をしていません。理由を想像すると、管理ツールの導入費用が割けない、管理している暇がない、といったところでしょうか?

 

テレワークの際、どのように時間管理をしているのか?回答表引用元:日本労働組合総連合会(連合).「テレワークに関する調査2020 pdf≫

 

在宅ワークに関して、社内の規定や雇用契約書にどう反映すればいいの?今の規定や雇用契約でカバーできているのだろうか?とお悩みなら、社労士へご相談ください。

 

なお、医療機関・クリニック・や店舗のスタッフ、工場スタッフは、現場に行かないと始まらないお仕事ですから、在宅ワークなんて関係ない!と思いがちですが、在宅ワークが広がってしまったポストコロナの時代、経営者としては、他社への人材流出を防ぐため、また従業員から不平等や不満がでないよう、勤務・賃金体系で何らかできることはあります。
例えばテレワークがしたくてもできない人に手当を支払う会社もあります。どんな対策をするかは、各社それぞれですが、自社にマッチした対策をすることで、従業員のモチベーションを維持・向上できるでしょう。

 

さて、同じ調査の中で、残業代の申告についての項目があります。

 

残業代の申告についてアンケート回答結果引用元:日本労働組合総連合会(連合).「テレワークに関する調査2020 pdf≫

 

約3割の人は、なんとなく申告しずらい、という理由で申告していません。
こういったことを、社内の規定と照らし合わせてどのように考えていけば良いのか、そのようなご相談も当事務所では承っています。

 

法的なところ以外は、「絶対こうしなければならない」というものではありません。

職場環境・労働環境とは、経営者様の理念、会社経営の方向性と一貫性を持って考えられるべきものです。

 

当事務所では、中小企業の経営者様としてどんな会社にしたいか?
クリニックや動物病院であればどんなクリニックを目指すのか、という経営者様のお考えに寄り添い、一貫した人材育成や労務管理ができるよう、親身なアドバイスをモットーにしております。

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